カノパン

とある男子高校生のブログです。天体写真撮影、書評、人生考察をメインに月に一、二回投稿します。記録を付けるために書いています。

光害カットフィルターのあれこれ

 


 今回は光害カットフィルターの概要や活用法について詳しくまとめました。 

 光害カットフィルターは光害の原因になる波長をカットして、天体由来の波長を透過するフィルターで天体撮影には必須です。各フィルターの特性曲線を見るとどの波長が透過するのか、しないのかが分かります。元の販売会社のホームページに大抵載っています。色素タイプと蒸着タイプの二種類があり、前者は透過しない波長を吸収する、後者は反射するフィルターです。色素タイプは正面から見ると背後が透けて見え、広角レンズの前面に付けても透過する波長のずれが起きません。色ガラスフィルターとも呼ばれるそうです。ちなみにStarrynightがそうです。一方蒸着タイプは金属膜のような外見で、鏡のように光を反射します。このタイプは広角レンズの前面に付けると傾斜入射光によって波長透過特性が移動してしまいます。これによりカラーバランスが崩れ、色むらが発生する可能性があります。そのためカメラボディ側に付けるクリップタイプもあり、こちらは使用するレンズを選びませんが、ゴーストが出やすかったりバックフォーカスの変化によって周辺像が悪化することがあるなどのデメリットもあります。

 透過する波長の特性も大きく分けて二種類あります。幅広く波長を透過し、光害の波長をカットするマイルドなフィルターと、4種類の輝線(Hα、Hβ、Sⅱ、Oⅲ)や特定の波長のみを透過するナローバンドフィルターです。ナローバンドは狭帯域という意味です。前者は天の川などの銀河を気軽に撮影するのに向いています。後者は撮影対象によってフィルターを使い分けたり、画像の合成をする必要があるので、天体の特性や撮影機材、画像処理をよく理解していないと使いこなすのは難しいでしょう。

  じゃあ波長域が広い銀河を撮影する場合は、マイルドなフィルターの方がいいのかと言われれると、必ずしもそうとは言えません。確かに天の川の星景写真で使うならそれ(特にStarrynight)がベストですが、光害の影響をとことん減らして撮りたいときはナローバンドフィルターや短波長カット(バンドパス?)フィルターで撮影し、画像を合成する方法があります。例えば4輝線を透過するナローバンドで撮った画像に、バンドパスを使って4輝線と光害以外の波長を写した画像を合成すれば、可視光で見える範囲の銀河をほとんど再現することができます。簡単にまとめると、波長域が広い天体(銀河)は光害の波長のみカットし、特定の波長を発する天体(星雲など)ならその波長だけ透過させればいいのです。

 最近特性曲線を見ていて気が付いたのですが、ナローバンドフィルターは光害だけでなく月明かりも抑制できますね。月は太陽光線を反射して輝いているので、太陽光の波長とほとんど同じです。太陽の波長、可視光線400nm~800全域が月の波長になるわけです。ナローバンドはその波長域から観測に必要な波長だけ透過するので、光害と同じ考え方で月明かりの影響が抑えられていることが分かります。

 今回の記事はこれで終わりますが、光害カットフィルターは意外と奥が深く、まだまだ撮影、画像処理方法に応用の余地を感じました。

 東京都青梅駅周辺でStarrynightを使用して撮影。DeepSkyStackerで加算平均合成しました。訳あってグレースケールの画像になっています。レベル補正等の処理は行っていません。

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Nikon D7100 75mmF2.8 ISO100 SS30s×16

 

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